「ポメラ」は文章やアイデアを描く最初の装置であり
自分の体の一部です。羽田 圭介(小説家)

さて、今回ご登場いただくのは、芥川賞受賞作『スクラップ・アンド・ビルド』をはじめとする多くの小説を「ポメラ」で執筆された羽田さん。執筆法や「ポメラ」とのエピソードなど、10の質問に回答しながら、「ポメラ」ユーザーとしてスタイルを語っていただきました。

小説家・羽田圭介

1985年、東京都出身。明治大学商学部卒。高校在学中に「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞。卒業後は会社員となるが、2009年には専業小説家に。2015年『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川賞を受賞。4月12日に最新刊『ポルシェ太郎』(河出書房新刊書)が刊行される。

↑「ポメラ」の登場は雑誌で知ったという羽田さん。発売当時、「ネットもメールもできない」ことが大きな話題となりました

Q.1 「ポメラ」の存在を知ったきっかけは?

「最初に発売された『DM10』は、雑誌の記事で知ったと思います。高校生の時に書いたデビュー作『黒冷水』から3作目の『走ル』までは手書きだったんです。それもけっこう複雑で、まず原稿用紙に手書きしたものをパソコンのWordで打ち直し、いったん印刷をします。それに手書きで赤字を入れて、その修正をWordに反映させるというやり方です。これはそもそも『黒冷水』を応募する時、手書き原稿をパソコンで打ち直したところから始まっているんですが、けっこうしんどい作業なんです(笑)。そこで4作目からは、ノートPCで執筆するように変えました」

Q.2 なぜPCではなく、「ポメラ」を選んだのか?

「ノートPCで3、4作執筆しましたが、明るいディスプレイをずっと見ているんで、今度は目が疲れるようになったんです。小説家の仕事は、執筆しながら文章を読み直している時間が大半なので、長時間見るのはしんどいんです。そこで、「ポメラ」に乗り換えました。当時の「ポメラ」には液晶にバックライトが付いていなかったため、画面自体が光を発しないので目が疲れず、紙で読むのと同じように文字を追えます。2011年に書いた『隠し事』から「ポメラ」を使うようになったんですが、モバイル性やネットにつながらないので集中できるということより、目が疲れないことが購入動機でしたね」

↑現在使用しているのは、羽田さんにとって3台目の「ポメラ」となる「DM200」。文字変換の向上をはじめ、使い続けているからこそわかる進化が多く、完成度は歴代No.1だとか

Q.3 選んだ「ポメラ」は?

「僕にとって1台目となる「ポメラ」は、『DM20』です。買った当時、ノマドワーカーが流行っていて、自分もカフェで使おうと出かけたのですが、コーヒー1杯で店に何時間も粘る後ろめたさがノイズになって、書くことに集中できませんでした。キーボードが折り畳み式のとても携帯性に優れたモデルでしたが、ずっと家で使っていましたね。2台目は発売されてすぐに買った『DM100』で、このモデルは4-5年使いました。『DM20』に比べて画面が大きく、キーボードもストレートタイプになり、安定感を増してずっと打ちやすくなったことを覚えています。使ってすぐに『DM20』には戻れなくなりましたね。テキストをBluetoothで送信できることも便利だったし、バッテリーが切れても安心な乾電池式というのも気に入りました。今までの中ではもっとも使用期間が長くて、芥川賞受賞作『スクラップ・アンド・ビルド』も『DM100』で書いた作品です。その後、現時点での最上位機種『DM200』に乗り換え、現在まで2年以上使っています」

Q.4 いつもはどういった場所・シーンで使っている?

「主に、小説やエッセイの執筆に使っています。パッと思いついたネタを、メモとして書き留めておくこともあります。「ポメラ」だとテキストをスムーズに、自分の意思通りに打てるんです。端的にメモをする時はスマホの方が便利なのですが、長めの繊細なニュアンスを記したいときは『DM200』を使っています。ちょっとした外出や短期の出張は、スマホで事足りますが、海外出張など長期間出かける時は、仮に使わないと思っても、持って出ないと不安になりますね」

Q.5 具体的に気に入っているポイントは?

「『DM100』から乗り換えた当初は、でかい、重い、電池式の方がよかった、『DM100』と同じくバックライトは要らない、など不満ばかり言っていたんですが、慣れてくるとガラッと印象が変わりました。とにかく変換がめちゃくちゃスムーズなんですよ。進化としてはわかりにくい点なのですが、実は最も大きな進化です。ファイルのアップロードやPCとのリンクもスムーズですね。バックライトも目にやさしく、公共施設にUSBポートが普及した昨今では電池式じゃなくてもバッテリーに困らない。正しい進化だったんだと思います。もう『DM100』には戻れないですね(笑)」

Q.6 最近、「ポメラ」で書いた作品を見せて!

「画面は、白黒を反転させて文字を入力しています。「ポメラ」で書いた文章は作成した日付でファイルを作っていますね。切りのいいところでまとめています」

↑画面に表示されているのは、4月に刊行予定の最新作『ポルシェ太郎』の原稿。すぐに文章が開けるよう、作品によってきれいにフォルダ分けがされていたのはさすが。白黒反転のほか、「DM200」からの新機能で、上下のツールバーを非表示にし文章により集中できる「全画面表示」も活用している様子です
↑2年以上、ほぼ毎日使用することで表面がツルツルになったキーボード。エイジングによって光沢を帯びたキーが、「ポメラ」愛を物語ります
↑起動の速さは歴代共通で羽田さんが気に入っているところ。長いメモ書きは、スマホを使わずに「ポメラ」で書いているそう

Q.7. 「ポメラ」に物申したいことは?

「『DM200』の仕様のままで、画面サイズが大きいモデルを出してもらえれば50万円出しても欲しいと、キングジムさんに提言したことがあるんですが、その気持ちはいまも変わりません。ただ、画面サイズを除くと『DM200』に不満をもったことはほとんどありません。あえていうのであればマウスが使えるといいいいですね」

Q.8 自分にとって「ポメラ」とは?

「『隠し事』以降は、歴代の「ポメラ」で書いているのでもう7、8年使っていることになりますね。ここまで使い込むと機械というより、自分の身体と同じで、文章やアイデアをまず最初にアウトプットする装置として、自分の中に組み込まれている感じがします」

Q.9 「ポメラ」への愛が冷めることはある?

「実は思い入れとか愛着はないんです。愛着って他者に対して湧くもので、「ポメラ」のように自分自身の一部になっていたり、自分にとって当たり前のものには湧かないんですよね。これが壊れたり、欠如した時に存在の大きさがわかると思います。もし「ポメラ」がなくなるようなことがあれば、その偉大さに気づくでしょうけど、まず大丈夫ですね。剛性に優れ今まで一度も壊れたことがないので、しばらくは『DM200』を使い続けます!」

↑“55年後”とは、羽田さんが考えるご自身の寿命のことだとか!「一生おつきあいしましょう」という、「ポメラ」愛を感じる熱い思いが込められています

Q.10 最後に、10周年を迎えた「ポメラ」にお祝いメッセージをください!

「書くための機械であり身体である「ポメラ」を、今後55年間は作り続けてください!」

羽田さんが「ポメラ」を使って7年経ちますが、その間に「ポメラ」を使ったさまざまな傑作が誕生し、すでに全作品の半分以上が「ポメラ」で書いた作品となりました。「ポメラ」のほぼすべてを知り尽くし、機能の中から必要な部分だけを使うスタイルは、ユーザーや、これから「ポメラ」を使おうと考えている人の、いいお手本になりそうですね。

羽田圭介さん、ありがとうございました!